目次
「求人がある」と「働きたい」は、同じではありません。
地域の人材不足について考える時、よく「求人は出しているのに人が来ない」という話を聞きます。
一方で、若い世代から見れば、求人があるだけで仕事を選ぶわけではありません。
どんな仕事なのか。自分にできるのか。成長できるのか。どんな人が働いているのか。どんな働き方なのか。将来どうなれるのか。そうしたことを考えます。
これは、若い人がわがままになったという話ではありません。
仕事を選ぶということは、自分の時間や人生の大きな部分をどこで過ごすのかを選ぶことでもあります。
だからこそ、「仕事があるから来てください」だけでは、人材確保は難しくなっているのだと思います。
「仕事がある」から、「ここで働きたい」へ。
雇用の数だけではなく、仕事の魅力や、その先にある成長と暮らしまで考える。
若者は、仕事だけを見ているわけではありません。
例えば、同じ仕事内容だったとしても、給与。休日。勤務時間。成長できる環境。職場の雰囲気。会社の将来性。自分の意見を言えるか。新しいことに挑戦できるか。そうした違いがあります。
そして、仕事だけではありません。通勤しやすいか。暮らしやすいか。友人や家族との時間を持てるか。結婚や子育てを考えられるか。趣味を楽しめるか。
若い人が「岩国で働く」という選択をする時、仕事と暮らしはつながっています。
だから私は、雇用政策だけで若者の定着を考えるのではなく、「働く」と「暮らす」を一体として見る必要があると考えています。
働く
- 仕事内容
- 給与・働き方
- 成長できる環境
- 挑戦できる
- 会社の将来性
暮らす
- 住まい
- 子育て
- 移動
- 人とのつながり
- 自分の時間
岩国で働くという選択
ここで人生をつくれるか
地域企業には、まだ伝わっていない魅力もあります。
地域企業について話をしていると、私は、「こんな仕事を岩国でしている会社があるんだ」と驚くことがあります。
高い技術を持っている。全国や海外と仕事をしている。地域の暮らしを支えている。若い社員が重要な仕事を任されている。新しい分野に挑戦している。そうした企業が、岩国にもあります。
しかし、その魅力が若い世代に十分伝わっていなければ、選択肢にすら入りません。知らない会社は、選びようがありません。
だから、地域企業の採用を考える時には、求人を出すだけではなく、「どんな会社なのか」「どんな人が働いているのか」「どんな未来があるのか」を伝えることも重要だと考えています。
- 知らない
- 知る
- 興味を持つ
- 働く姿を想像する
- 選択肢に入る
伝えるべきこと
- 仕事
- 人
- 技術
- 働き方
- 成長
- 挑戦
採用は、「募集する」だけではなく「知ってもらう」ところから。
企業も、変わり続ける必要があります。
もちろん、情報発信さえすれば人が集まるわけでもありません。若い人に選ばれるためには、企業自身が変わっていくことも必要です。
働き方を見直す。人を育てる。デジタルを活用する。社員の声を聞く。新しい事業に挑戦する。会社の将来を伝える。
これは、若者に迎合するということではありません。人口が減り、人材確保が難しくなる時代に、企業が持続的に成長するための経営課題でもあります。
そして、企業が変わることは、そこで働く人にとってもプラスになります。若者に選ばれる企業を増やすことは、結果として、地域企業そのものを強くすることにもつながると考えています。
視野を広げる
- 働き方
- 人材育成
- DX
- 情報発信
- 挑戦できる環境
人材確保を、企業改革のきっかけに。
給与の問題から、逃げてはいけない。
働く場所を考える上で、給与や待遇も当然大切です。「やりがいがあれば、給料は低くてもいい」という話ではありません。
生活するためには、所得が必要です。将来を考えるためにも、安心して暮らせる待遇は大切な条件です。
一方で、行政が民間企業の給与を直接決めることはできません。
だからこそ、企業が生産性を高める。新しい仕事をつくる。付加価値を高める。人に投資する。そうした企業の成長を後押しすることが重要です。
企業が稼ぐ力を高め、働く人にも価値が還元される。その環境づくりまで含めて、地域経済政策を考える必要があります。
「やりがい」か「待遇」か、ではない。
やりがいも。成長も。暮らせる所得も。働き続けられる環境を、総合的に考える。
「若者向けの仕事」を行政が決めるわけではありません。
若い人が求めている仕事を、行政が決めることはできません。そして、行政が新しい仕事をすべてつくることもできません。
仕事を生み出す中心は、企業や事業者、そして挑戦する人たちです。
行政にできるのは、企業と人をつなぐ。企業の成長を支える。人材育成を後押しする。DXや生産性向上を支える。新しい事業が生まれやすい環境を整える。地域の企業を知る機会をつくる。そうした土台づくりです。
私は、行政が「この仕事をしてください」と若い人に求めるのではなく、さまざまな選択肢が生まれる環境をつくることが大切だと考えています。
行政が整える土台
- 知る機会
- 人材育成
- 採用支援
- DX・生産性
- 新事業・挑戦
- Uターン支援
選択肢が増える
地域企業と若者が、もっと早く出会える岩国へ。
若い人が就職活動を始めてから、初めて地域企業を知る。それでは、少し遅い場合もあると思っています。
子どもの頃から、地域でどんな人が働いているのか。どんな企業があるのか。どんな技術があるのか。どんな仕事が地域を支えているのか。そうしたことを知る機会があれば、将来の選択肢は広がります。
これは、Vol.12でお伝えした「まち全体を子どもたちの学びの場へ」という考え方にもつながります。
地域企業との出会いは、すぐに採用するためだけのものではありません。「こんな仕事もある」と知る。働く大人の話を聞く。仕事に興味を持つ。それが、何年か後に「岩国で働く」という選択肢につながるかもしれません。
- 1地域企業を知る
- 2仕事を知る
- 3興味が広がる
- 4外で学ぶ・経験する
- 5岩国で働くことも選択肢に
採用の直前だけではなく、地域との接点を長くつくる。
採用だけでなく、「定着」まで見る。
人材確保の政策では、何人採用できたか。何社が制度を利用したか。こうした数字を見ることがあります。もちろん、必要な数字です。
ただ、採用された後も大切です。その人が働き続けているのか。会社に馴染めているのか。成長できているのか。企業側にもメリットがあったのか。すぐ辞めてしまったとすれば、何が原因だったのか。
採用は、ゴールではありません。企業と人が、お互いに「ここで働いてよかった」「来てもらってよかった」と思えること。そこまで見ていく必要があります。
採用は、ゴールではない
- 定着
- 成長
- 企業側の評価
- 本人の評価
「採れたか」から、「続いているか」へ。
私が目指す岩国
私は、若者に「岩国で働きなさい」と言いたいわけではありません。東京で働く。海外へ行く。別の地域で挑戦する。それも大切な選択です。
ただ、自分の将来を考えた時に、「岩国には仕事がない」「岩国では成長できない」と、最初から選択肢から外れてしまう地域にはしたくありません。
岩国にも、挑戦できる仕事がある。成長できる企業がある。魅力的な人がいる。地域にいながら、外ともつながれる。仕事だけではなく、暮らしも大切にできる。
そして、人生のどこかで「岩国で働いてみようかな」と思える。私は、そんな選択肢のある地域をつくりたいと考えています。
若者を地域に縛るのではなく、若者から選ばれる地域へ。「仕事がある」から、「ここで働きたい」へ。企業と若者の双方が成長できる岩国を目指していきます。
今回のポイント
- 「求人がある」と「若者が働きたい」は同じではない
- 仕事だけでなく、成長・働き方・暮らしまで含めて考える
- 地域企業には、まだ若い世代に伝わっていない魅力もある
- 採用支援だけでなく「人に選ばれる企業」への成長も重要
- 人材政策は「採用人数」だけではなく「定着」まで見る
「若者を地域に縛るのではなく、若者から選ばれる地域へ。」
「仕事がある」から、「ここで働きたい」へ。
執筆
瀬村 尚央(せむら ひさお)
岩国市議会議員
Vol.17
起業を応援する理由
なぜ、行政が起業を応援する必要があるのでしょうか。一人の起業だけを特別扱いするためではありません。新しい会社。新しいサービス。新しい仕事。地域課題を解決する新しい仕組み。一つの挑戦から、地域にこれまでなかった価値が生まれることがあります。次回は、起業支援を「補助金」の話だけで終わらせず、地域の未来という視点から考えます。
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