瀬村尚央 政策コラム Vol.17

起業を応援する理由

なぜ、

行政が一人の起業を応援する必要があるのでしょうか。

起業した本人だけを特別扱いするためではありません。

一つの挑戦から、新しい仕事。新しいサービス。新しい選択肢。

そして、これまで解決できなかった地域の課題を解決する方法が生まれることがあります。

私は、「起業そのもの」ではなく、そこから地域に生まれる価値を応援したいと考えています。

瀬村尚央第3章挑戦する人への投資約5分
目次

起業は、「会社をつくること」がゴールではありません。

起業という言葉を聞くと、会社をつくる。お店を始める。経営者になる。そんなイメージを持つと思います。

もちろん、それも起業です。

しかし、地域政策として起業を考える時、会社が何社できたかだけを見ても十分ではありません。

本当に大切なのは、その挑戦によって何が生まれたのか、ということです。

地域になかったサービスが生まれた。困っていた人の課題が解決された。新しい仕事が生まれた。地域の資源を活かした商品ができた。若い人が活躍できる場所が生まれた。

私は、そこに起業を応援する意味があると考えています。

「起業すること」が、目的ではない。「新しい価値が生まれること」が、目的です。

会社の数を増やすことではなく、地域に何が生まれたのかを見る。

「今ないもの」は、誰かがつくらなければ生まれない。

地域で暮らしていると、「こんなお店があったらいいのに」「こんなサービスがあれば便利なのに」「この課題を解決できないだろうか」と思うことがあります。

行政が対応できることもあります。既存の企業が取り組めることもあります。

一方で、新しい発想を持った誰かが始めることでしか生まれないものもあります。

例えば、地域資源を活かした新しい商品。子育て世代を支えるサービス。高齢者の困りごとを解決する仕組み。新しい観光体験。デジタルを活用したサービス。空き店舗を活用した新しい場所。

こうしたものは、最初は誰か一人の「やってみたい」から始まるかもしれません。

図解でわかる地域の「ない」を、新しい「ある」へ。起業は、地域に新しい選択肢をつくる方法の一つ。

地域の「ない」

  • こんなサービスがない
  • 働きたい仕事がない
  • 使われていない場所がある
  • 地域の困りごとがある
  • 活かしきれていない資源がある
やってみよう挑戦する人

地域の「ある」

  • 新しいサービス
  • 新しい仕事
  • 新しい場所
  • 課題解決の仕組み
  • 地域資源を活かした商品

「ない」を見つけ、それが、起業の一つの価値。「ある」をつくる。

起業は、新しい「仕事」を生み出す方法の一つです。

Vol.16では、若者から「働きたい」と思われる岩国について考えました。そのためには、今ある企業を強くすることが重要です。

しかし、それだけではありません。これまで岩国になかった仕事を、新しくつくるという方法もあります。

最初は、一人で始めた小さな事業でも、利用する人が増える。仕事が増える。仲間が必要になる。人を雇う。別の企業との取引が生まれる。という可能性があります。

もちろん、すべての起業が雇用につながるわけではありません。一人で事業を続ける形もあります。

それでも、これまで地域になかった仕事が一つ増える。それ自体も、地域の選択肢を増やすことにつながります。

仕事は、「探す」だけではなく「つくる」こともできる。
今ある仕事から選ぶ新しい仕事をつくる

地域の働く選択肢が増える

どちらが上ではない。「働く」の選択肢を増やす。

地域課題が、新しい事業の入口になることもある。

起業というと、「儲かりそうなビジネスを考える」というイメージがあるかもしれません。もちろん、事業を続けるためには収益が必要です。

しかし、地域の困りごとから生まれる事業もあります。

例えば、移動に困っている人がいる。空き家が増えている。子育て世代が困っていることがある。高齢者が日常生活で困っている。地域の商品が十分に知られていない。

こうした地域課題に対して、行政だけではなく、民間の発想や技術によって新しい解決策が生まれることがあります。

私は、地域課題を「行政だけが解決するもの」にしないことも重要だと考えています。

「困りごと」が、新しい価値の入口になる。
  1. 地域の困りごと
  2. 気づく
  3. アイデア
  4. 試してみる
  5. サービス・仕組み
  6. 地域の選択肢が増える

行政が担うべきことは行政が担う。その上で、民間だからこそできる解決も活かす。

ただし、「起業してください」では始まりません。

起業には、リスクがあります。事業のアイデアがある。でも、何から始めればいいか分からない。相談相手がいない。資金について分からない。制度が分からない。場所がない。一緒に取り組む仲間がいない。最初の顧客と出会えない。そうした壁があります。

行政が、「起業を増やします」と掲げるだけでは、挑戦は増えません。

だからこそ、起業を考えている人が、必要な人や情報にたどり着きやすい環境をつくることが大切です。

必要なのは、「補助金」だけではない。
挑戦する人

行政が整える土台

  • 相談
  • 先輩・経験者
  • 金融機関
  • 企業
  • 支援機関
  • 行政・制度

挑戦を一人にしない

「つながる場所」が、挑戦を前に進める。

起業する人にとって、お金と同じくらい重要なのが、人とのつながりだと思っています。

すでに事業をしている人から経験を聞く。専門家に相談する。地域企業と出会う。金融機関と話す。一緒に取り組む仲間を見つける。最初のお客さんと出会う。

一人では分からなかったことが、誰かとつながることで前に進むことがあります。

だから、行政がすべてを教える必要はありません。地域にすでにある知識。経験。企業。金融。人材。をつなぐ。

私は、そうした「挑戦の入口」を分かりやすくすることも行政の役割だと考えています。

支援とは、「答えを与えること」ではなく、必要な人とつながれるようにすること。

地域にある知識・経験・企業・金融・人材を、挑戦する人につなぐ。

最初から大きな起業でなくてもいい。

「起業」と聞くと、大きな会社をつくる。何人も雇う。急成長する。そんなイメージを持つかもしれません。

しかし、私は、もっと小さな始め方があってもいいと思っています。

副業として始める。週末だけ試してみる。小さくサービスを始める。イベントで試してみる。地域活動から事業につながる。まずは一人で始める。

最初から大きなリスクを取るのではなく、小さく試して、利用者の声を聞いて、改善する。そして、可能性があれば広げる。そうした挑戦の仕方もあります。

小さく始めて、確かめながら育てる。
  1. 1アイデア
  2. 2小さく試す
  3. 3使ってもらう
  4. 4声を聞く
  5. 5改善する
  6. 6続ける・広げる・見直す

最初から、すべてを賭けなくてもいい。

起業支援も、「件数」で終わらせない。

そして、行政が起業を支援するなら、成果を見ることも必要です。

起業相談を何件受けた。補助金を何件出した。何社が起業した。もちろん、それも一つの数字です。

でも、私はその先も見たいと思っています。事業は続いているのか。地域の利用者に必要とされているのか。新しい仕事につながったのか。地域企業との取引が生まれたのか。地域課題の解決につながったのか。新たな挑戦者が生まれたのか。

「起業させること」が政策のゴールになれば、本来の目的を見失います。

「何件起業したか」の、その先へ

起業件数地域に生まれた価値
  • 継続
  • 地域への価値
  • 仕事
  • 取引
  • 課題解決
  • 次の挑戦

起業を増やすことではなく、地域の価値を増やすこと。

失敗できない地域では、挑戦は生まれにくい。

起業には、成功もあれば、うまくいかないこともあります。始めた事業をやめることもある。方向転換することもある。もう一度会社員として働くこともある。

それを、人生の失敗にしてはいけないと思います。

もちろん、税金で事業の失敗をすべて補うという意味ではありません。無責任な挑戦を肯定するということでもありません。

ただ、一度挑戦してうまくいかなかった人が、その経験を活かして、別の仕事や次の挑戦に進める。そうした環境は、挑戦する人を増やすために重要だと考えています。

失敗を「ゼロ」にするのではなく、再挑戦できる地域へ。
  1. 1挑戦
  2. 2経験
  3. 3学び
  4. 4次の仕事・次の挑戦

公的支援は、挑戦の結果を保証するものではありません。

既存企業と起業家を、分けて考えない。

そして私は、既存の地域企業と新しく起業する人を、別々の存在として考えすぎないことも大切だと思っています。

新しい事業者が、地域企業の商品を使う。地域企業から仕事を受ける。地域企業と一緒に新しいサービスをつくる。逆に、地域企業が、起業した人の技術やアイデアを活用する。

新しい会社が生まれることと、今ある会社が成長することは、対立するものではありません。

新しい挑戦と、地域企業の力がつながる。そこから、また新しい仕事や価値が生まれる可能性があります。

「新しい会社」×「今ある会社」

新しい挑戦

  • アイデア
  • 技術
  • 新しいサービス

地域企業

  • 経験
  • 人材
  • 顧客
  • 技術

連携新しい仕事・価値が生まれる

私が目指す岩国

私は、すべての人に「起業してください」と言いたいわけではありません。

地域企業で働く。公務員になる。専門職として働く。家業を継ぐ。起業する。副業から始める。外の会社で働きながら岩国と関わる。働き方や挑戦の形は、人それぞれです。

大切なのは、「やってみたい」と思った人が、何から始めればいいのか分からないまま諦めてしまわないこと。

必要な人に出会える。相談できる。小さく試せる。そして、失敗しても、その経験を次につなげられる。私は、そんな岩国を目指したいと思っています。

起業そのものを増やすことが目的ではありません。岩国に、新しい仕事が生まれる。新しいサービスが生まれる。地域課題を解決する仕組みが生まれる。

そして、それを見た別の人が「自分もやってみよう」と思う。そんな挑戦の連鎖をつくっていきたいと考えています。

今回のポイント

  • 起業は「会社をつくること」ではなく、新しい価値を生む方法の一つ
  • 新しい事業によって、地域の仕事やサービス、選択肢が増える可能性がある
  • 起業支援は補助金だけではなく、人・情報・企業・金融との接続が重要
  • 最初から大きく始めず、小さく試して改善する挑戦も大切
  • 「起業件数」だけでなく、その後地域に何が生まれたかを見る

「起業を増やすことが目的ではない。地域の『新しい価値』を増やす。」

一人の「やってみたい」を、岩国の新しい選択肢へ。

執筆

瀬村 尚央(せむら ひさお)

岩国市議会議員

Vol.18

「帰ってきたい」と思える岩国へ

帰れる仕事がある。挑戦できる。暮らせる。人とつながれる。そして、「ここでやってみたい」と思える。第3章では、若者。地域企業。働くこと。起業。挑戦。について考えてきました。次回は、それらを一つにつなぎ、「挑戦する人への投資」がどんな岩国を目指すのかを考えます。

近日公開

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