瀬村尚央 政策コラム Vol.20

防災は、「もしも」ではなく「いつか」の備え

災害は、起きる日時を選べません。

だからこそ、起きてから考えるのではなく、起きる前に考える。

自分の地域に、どんな危険があるのか。どこへ逃げるのか。どうやって情報を受け取るのか。そして、地域で誰を支えるのか。

防災への投資とは、災害に備えることだけではありません。「いつもの暮らし」を、できる限り守るための投資です。

瀬村尚央第4章地域への投資約6分
目次

災害が起きてからでは、できないことがあります。

災害が発生すれば、行政、消防、消防団、警察、自衛隊、医療機関、そして地域と、さまざまな人たちが対応にあたります。

しかし、災害が起きた瞬間から、すべてを準備することはできません。

どこに危険があるのか。どこへ避難するのか。どのように情報を伝えるのか。避難所をどう運営するのか。必要な物資は何か。支援が必要な人は誰なのか。道路や橋は使えるのか。こうしたことは、災害が起きる前から考えておく必要があります。

だから私は、防災で最も大切なのは、「災害が起きた時にどうするか」だけではなく、「災害が起きる前に何をしておくか」だと考えています。

災害が起きてから考えるのではなく、起きる前に、できることを増やす。

知る。備える。つながる。逃げる。支える。平時の準備が、災害時の行動につながります。

まず、自分の地域の「危険」を知る。

防災の第一歩は、自分が暮らしている場所に、どんな災害の可能性があるのかを知ることです。

洪水。土砂災害。高潮。地震。津波。同じ岩国市でも、地域によって災害リスクは異なります。

だからこそ、「岩国市は危ないのか、安全なのか」という大きなくくりだけではなく、自宅、職場、学校、普段使う道路、家族が過ごす場所。それぞれについて、危険を知っておくことが重要です。

岩国市では、Web版ハザードマップで洪水や土砂災害などの情報を確認できます。しかし、ハザードマップは「見たことがある」だけでは十分ではありません。自分の暮らしと重ねて考える。そこまでして初めて、避難行動につながる情報になります。

図解でわかる命を守るのは、一つの対策ではない。平時から重ねる、防災の「層」。
暮らし・命この暮らしを、層で守る
  • 知るハザード地域の危険
  • 備える備蓄持出品住まい
  • 逃げる避難先避難経路タイミング
  • つながる家族地域支援が必要な人
  • 支える行政消防医療インフラ

一つではなく、何層もの備えで暮らしを守る。

「避難場所を知っている」だけでは足りません。

避難場所を確認することは重要です。しかし、本当に災害が起きた時、そこまで安全に行けるとは限りません。

大雨。夜間。停電。道路の冠水。土砂災害。地震による道路の被害。普段なら通れる道が、使えなくなることも考えられます。

だから、「避難場所はどこか」だけではなく、「どうやって行くのか」「いつ逃げるのか」まで考えておく必要があります。そして、災害の種類によっては、避難先や取るべき行動も変わります。

避難は、「場所」だけではない。
  • WHEREどこへ逃げる?
  • WHENいつ逃げる?
  • HOWどうやって逃げる?
  • 災害の種類
  • 自分・家族の状況
  • 地域の状況

自分の避難行動

「避難所を知っている」から、「避難できる」へ。

情報が届かなければ、避難につながらない。

災害時には、正確な情報を、できるだけ早く受け取ることが重要です。

岩国市では、防災行政無線だけではなく、市民メール、市公式LINE、市民ニュースアプリ、ホームページなど、複数の方法で防災情報を発信しています。一つの手段だけに頼らず、自分が受け取りやすい方法をあらかじめ確認しておく。それも防災です。

一方で、スマートフォンを使わない方。デジタル機器に慣れていない方。情報を受け取りにくい方。さまざまな人がいます。だからこそ、防災情報は「発信したか」ではなく、「必要な人に届いたか」まで考える必要があります。

「伝えた」から、「届いた」へ。

防災情報

防災行政無線市民メール
市公式LINE市民ニュースアプリホームページ地域・家族

情報発信の目的は、「発信すること」ではなく「行動につなげること」。

防災は、「行政だけ」でできるものではありません。

災害が大きくなれば、行政や消防だけで、すべての場所へ同時に対応することはできません。だからこそ、自分で備える。家族で備える。地域で支え合う。行政が支える。それぞれの力が必要になります。

ただし、「自分の命は自分で守ってください」と、行政が責任を市民へ押し付けるという意味ではありません。

行政には、情報を届ける。避難環境を整える。インフラを強くする。備蓄する。消防・救急体制を整える。地域の防災活動を支える。災害時に迅速に対応する。という役割があります。その上で、市民・地域・行政がそれぞれ準備しておく。それが、地域全体の防災力につながります。

防災は、誰か一人ではできない。
自分・家庭
  • 備蓄
  • 避難確認
  • 家族との連絡
地域
  • 声かけ
  • 自主防災
  • 助け合い
行政
  • 情報
  • 避難環境
  • インフラ
  • 消防・救急

地域全体で命を守る

「地域のつながり」が、災害時の力になる。

普段から、近所にどんな人が暮らしているのか。一人暮らしの高齢者はいないか。避難に支援が必要な人はいないか。地域の避難場所はどこか。そうしたことを知っている地域と、ほとんどつながりがない地域では、災害時の動きも変わってきます。

防災訓練。自治会。自主防災組織。消防団。地域活動。普段は、それぞれ別の活動に見えるかもしれません。しかし、災害が起きた時には、日頃のつながりが大きな力になります。

防災は、設備だけの問題ではありません。「人と人とのつながり」も、地域の大切な防災基盤です。

避難した「後」の暮らしも考える。

防災というと、「避難できたら終わり」と思ってしまいがちです。しかし、大きな災害では、避難生活が続くこともあります。

水。食料。電源。トイレ。衛生。睡眠。プライバシー。乳幼児。高齢者。障害のある方。持病のある方。ペットと暮らす方。避難する人の状況は、一人ひとり違います。

だから、「避難場所がある」だけではなく、避難した後にどのように生活を守るのか。という視点も重要です。

「避難できた」で、終わらせない。
  1. 1危険から逃れる
  2. 2避難生活
  3. 3暮らしを守る

暮らしを守るために

  • 水・食料
  • トイレ・衛生
  • 電源
  • 睡眠
  • プライバシー
  • さまざまな配慮

命を守る。その次に、暮らしを守る。

道路も、防災の一部です。

Vol.19では、道路を「暮らしを支えるインフラ」として考えました。道路は、防災でも重要です。

避難する。消防車や救急車が走る。支援物資を運ぶ。被災した場所へ向かう。復旧作業を進める。道路が使えなければ、災害対応そのものが難しくなる場合があります。

つまり、道路政策と防災政策も、別々ではありません。日頃からインフラを維持すること。危険な場所を把握すること。災害時のルートを考えること。これも、平時からできる防災です。

「道路」と「防災」は、つながっている。

道路

避難
救急
消防
物資
復旧

平時のインフラ整備が、災害時の対応力になる。

「防災設備を整備した」で終わらせない。

防災行政無線を整備した。備蓄品を用意した。避難所を指定した。ハザードマップを作った。防災訓練を実施した。もちろん、どれも大切です。

しかし、政策としては、「整備した」「実施した」だけではなく、その先を見る必要があります。情報は届いたのか。市民は避難先を知っているのか。訓練によって課題が見つかったのか。必要な人が避難できるのか。備蓄は実際に使える状態なのか。

そして、見つかった課題を次の備えに反映できているのか。防災も、「やりました」で終わらせず、改善を続けることが大切です。

防災も、「備えた」で終わらせない。
  1. 1備える
  2. 2確認する
  3. 3訓練する
  4. 4課題を見つける
  5. 5改善する

災害がない時こそ、備えを更新する。

私が目指す岩国

防災は、成果が見えにくい政策です。何も起きなければ、備えの重要性を感じにくいかもしれません。それでも、備えなければならない。私は、それが防災だと思っています。

危険な場所を知る。情報を届ける。避難できる環境をつくる。道路や河川などの基盤を守る。地域のつながりをつくる。避難した後の生活まで考える。そして、訓練や点検を通じて備えを更新し続ける。

災害そのものを、完全になくすことはできません。しかし、被害を減らすためにできることはあります。

防災は、「いつか起きるかもしれない災害」だけのためにあるのではありません。今日も。明日も。この地域で安心して暮らすためにある。

だから私は、防災への投資を、「災害への備え」だけではなく、「暮らしを守るための投資」として考えていきたいと思っています。

今回のポイント

  • 防災は「災害が起きてから」ではなく、平時から始まっている
  • ハザードマップは見るだけでなく、自分の暮らしと重ねて考える
  • 避難は「どこへ」だけでなく「いつ・どうやって」まで考える
  • 防災情報は「発信したか」ではなく「必要な人に届いたか」が重要
  • 道路、地域のつながり、避難後の生活まで含めて防災を考える

「災害が起きてから考えるのではなく、起きる前に、できることを増やす。」

防災への投資は、「いつもの暮らし」を守るための投資です。

執筆

瀬村 尚央(せむら ひさお)

岩国市議会議員

Vol.21

地域コミュニティが、岩国を強くする

防災。子育て。高齢者の見守り。地域行事。困った時の助け合い。行政サービスだけでは支えきれない暮らしの中に、地域のつながりがあります。一方で、自治会や地域活動の担い手不足も考えなければなりません。次回は、「昔ながらの地域活動を守る」だけではなく、これからの時代の地域コミュニティについて考えます。

近日公開

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